高まる射幸欲

私はついていない人間なので、当然、くじ運もない。


毎年、クリスマス時期は一万円以上買い物をして、ショッピングモールの歳末抽選くじを引いたりするが、だいたいアメかうまい棒、運が良くて一つ上のサランラップだ。


私の家族も悲しいほどくじ運が悪い。以前、夫婦で家族の誕生日を組み合わせて、毎週ロトを買っていたが、あまりにもかすらなくて、1円のバックも出ないまま、断念した。


でも、子ども達はクジから、お祭りの射的や、携帯ショップの前でよくやっている巨大なガラガラや、フェニックスガムやガリガリクンの当たりまで、とにかく運試しが大好きだ。


そして、娘はテレビの視聴者プレゼントにも飽くことなくマメに応募している。

私は、

「当選の発表は、発送をもって代えさせていただきます。」

ほど、信用できないものはないと思っているので、絶対に応募しないのだが、娘は、

「ふぐちりセットって、毒ないんだよね?大丈夫だよね?」

と、当たった後の心配をしている。

ちなみに、ただの一度も当選したことはない。


結局、くじ引きの醍醐味は、もちろん本当に賞品を手にすることもそうだが、当たった時の喜ぶ自分を想像してワクワクする気持ちそのものじゃないかと思う。


そういえば、子どもの頃、近所の駄菓子屋でモロッコヨーグルトを3回連続で当てたことがある。あれが私のクジ運のピークだったねかもしれない。









やっぱ変じゃない?

この頃、堂々とひとりごとを言いながら道を歩いている人を見かける。


当然、イヤホンをしてハンズフリーで電話をしているのだが、夜道で後ろから、ブツブツと話しながら近づいてくると、やっぱり一瞬、ギョッとして振り返ってしまう。


数日前、大通りで、わりと長めの信号待ちをしていると、となりに来た男の人がやはり、ひとりで喋りながら青になるのを待っていた。

視線はひたすら前、そしてだんだん話がノッてきたのか、声がどんどん大きくなり、軽く拳を振ったり、大きく頷いたり始めた。でも視線は誰もいない前を見つめたまま。


なんだかなぁ、と思ってチラ見すると、その男の人を挟んだ隣の年配の女性も、けげんそうに彼を見ていた。もしかしたらケータイで彼が会話しているこてを知らなくて、危ない人だと思ったのかもしれない。


電話は片手で持って耳に当てるもの、という私の固定観念が、その光景を異様に見せているのだろうか。


いや、やっぱり、それ変じゃない?


あと、中高生女子のやたら赤すぎるリップも。

ならない電話

私が、息子と同じくらいの時、当然ケータイなどはなく、友達からの連絡はすべて家の電話にかかってきた。


私立中学に入ってからは、小学校時代の地元の友達ともあっさり縁が切れ、ドアをピンポンをして誘ってくれる人もいないので、

ただひたすらに誰かから誘いの電話がかかってくるのを待っていた。


夏休み、正月休み、ゴールデンウィーク…家の電話が鳴るたびに、胸を高鳴らせるが、だいたいが親あてかセールス。


こちらから、電話をかけて何とか一、二回遊ぶ約束をとりつけるが、果てしなく長い残りの休みは一人で潰すことになる。

図書館、古本屋、小さなショッピングモール、家の近所をルーティンの用に回って過ごすつまらない毎日。


我が家の電話はひたすら、ならない、ならない。


そして、長期夏休み明け、楽しそうにさざめく友達同士の話で、彼らが誘い合って、映画やプールや遊園地に行ったことを知る。

中には割と自分が仲良いと思っていた友達同士が原宿に出かけていたりして、自分だけが誘われなかったことにショックを受ける。


当時は、連絡網がキチンと配布されていたから、私の電話番号は誰でも知り得た。でも、その番号をプッシュしてくれる人は、誰もいなかったのだ。


胃腸炎地獄

我が子は元気なのがなにより。それはもう大前提。

ただ、幼稚園から小学校の頃の間は、どうしてもテンプレのように毎年季節ごとに罹患する病気がある。
私の経験上、かかって欲しくないランキングは
一位 胃腸炎(ノロ含む)
二位 溶連菌
三位 インフルエンザ

だ。もちろん、どれも重症化すると恐ろしい病気だが、最近、インフルは一度薬を飲んだだけで、だいぶ症状が回復するらしいし、あの溶連菌の二度にわたる尿検査も、やらない病院の方が増えたらしい。

なので、私の中でぶっちぎりの一位は、胃腸炎である。

まず、伝染力が半端ない。家がせまいのもあるが家族で1人かかると、はい、詰み。順番にバタバタと倒れる。特に大人がかかると、意外にも、吐きまくるというよりは、嘔吐するほどではないが、ずっとこみ上げる気持ち悪さがとれず、長期戦になる。

また、物品破壊力も相当なものだ。
子どもが小さい頃、夜中にもぞもぞと起き出し、「まま〜、なんかね…」
次の瞬間、マーライオン、からのマーライオン。寝巻きはもちろん、もう布団から、カーペットから、全部使用不能。ネットを駆使して、重曹クエン酸をかけまくってみても、あとの祭り。

実は、昨日から娘が胃腸炎でダウンしている。もちろん可哀想なのだけれど、もう大きいので、マスクをつけ、ポカリも一人で飲み、突然の大噴水もなく。
込み上げてきたらトイレに行くし、色々な部分で、楽にはなってきた。

一方で、私は今朝から徐々に胸焼けがひどくなってきている。明日は、ブログが書けないかもしれない。




陽気じゃない母親

星占いの本を見ていたムスメが、

「お母さんは何座?」

と、聞いてきたので、答えると、手元の本を眺めながら

「あー、これ全然当たってない、いつも陽気で周りを明るくする人…って、全然お母さんと違うじゃんね。」

と、同意を求めてきた。


正直、かなりショックだった。私は自分の子どもにまで、陽気で明るくない、と思われているのだ。


確かに、感情のコントロールが下手で、すぐパニクったり、人見知りでキョドったり、夫にヒステリックに怒ってしまったりする。そんな情けない様子をたびたび娘にも見せてしまっている。


それでも、出来る限り子ども達の前では、優しく穏やかな母でいたいと思っているのに。


よく、結婚式の挨拶などにもあるが、

「お母さんは、いつもニコニコしていて、家族を照らす太陽でした」

と、母親は、いつも笑顔で家族を温かく大らかに見守る存在であるべきなのだ。


すでに、暗く落ち込みやすく、友達も少ないことを見破られている母親を、娘は結婚式でどのように紹介してくれるのだろうか。


私が切った人。

今まで、数限りない人に突き放されたり、疎遠にされたりしてきた。

いつも、最後は必要のない存在になって振り払われる。


そんな思いばかりしてきた私だが、人生に2人だけ、まだ縁が繋がっているうちに、こちらから疎遠にさせてもらった人がいる。


一人は上の子の同じ幼稚園だったママ友だ。

子供同士が仲良くなったことと、家が割と近かったことから、待ち合わせて登園したり、幼稚園の帰りにどちらかの家で遊ばせたりするようになった。どちらかというと、彼女の方が積極的に声をかけてくれて、本当にありがたいと思っていた。


ところが、ある日、元々は彼女の友達でそのつながりで仲良くなったママから、私が彼女に話したことが、かなり自慢めいた話として周囲に広まっていると聞かされた。

そのことを教えてくれたママさんは、面白がって私に話した訳ではなく、自分も彼女に話した秘密がばらまかれていないか不安になったそうだ。

確かに、私にも彼女はそのママの話をかなり、悪意を含んだ形で話していた。そのことを本人には言わなかったけれど。


結局、私が相手を信用しすぎて、軽率に秘密を打ち明けたりしたのがいけなかったのだけれど、さすがに怖くなり、その近所のママからは距離を置くようになった。


もう1人は、下の子の習い事で知り合ったママで、とてもほんわかと人当たりがよく優しい人だった。

でも、彼女は優しいがゆえに、自分の子供のどんな行いも注意しなかった。彼女のお子さんと遊ぶたびに、いろいろと嫌な思いをしてきた娘は、ついに、そのお子さんとは遊びたくないという本音を口にした。


子ども同士のトラブルにはあまり口を出したくないという気持ちと、数少ないママ友によく思われたいという黒い気持ちで、娘を守ってやれなかった私は、申し訳ない気持ちでいっぱいになり、とりあえず習い事の曜日を変え、そのママさんからフェードアウトした。


今思うと、私がもっとうまく人間関係を作れていたら、どちらのママとも適度な距離感で上手に付き合えたはずだ。結局は、私の要領の悪さが人を遠ざけてしまうのだ。



涙の公園

こんな私でも、友達関係が華やかな時が少しだけあった。


上の子がまだ赤ちゃんだった時、歩いて行ける場所に児童館がなかったため、息子を抱っこヒモでくくりつけ、バスで少し遠くの児童館に通っていた。


毎回ではないが、同じバス停に同じ曜日、同じくらいの時間に、息子と同じくらいの赤ちゃんを連れてくるママさんがいた。何となく話すようになり、その内待ち合わせをして、一緒に児童館に通うようになった。


彼女は、私より2つ下で、美人で、でも庶民派で気さく、明るく誰とでも楽しく付き合える人だった。当然、彼女の周りには人が集まり始め、私も含め6人ほどのママグループになっていた。


児童館で車座になって持参のお弁当を食べさせたり、たまにはモールのフードコートでランチしたり、電車で子ども向けのイベントに行ったり、いわゆるリア充なママ友ライフ。

その中に私がいるなんて、夢のようだった。


そんな毎日に影がさしたのは、例の彼女が、みんなでリトミック系の習い事を一緒に始めないか?と提案したのがきっかけだった。


親子で連れ立って、ゾロゾロと体験に行ったのだが、すぐに楽しそうに踊ったり手遊びしたりする他の子をまえに、息子は固まったまま、私から離れようとせず、結局何もしないで終わった。


私もせっかく入れてもらったママグループから取り残されたくなくて、エゴ丸出しで、息子にすがったが、彼は断固入会を拒否し、結局、仲間内で私たち親子だけが、その習い事をやらなかった。


その後は、案の定、波がサアットひくように私のリア充ママ友ライフは寂しいものになっていった。


みんなは、週1で習い事で集まるので、あまり児童館に足を運ばなくなり、たまに、顔を合わせても、習い事の話だったり、そこで出来た新しい友達の話でついていけず。少しずつ、でも確実に私はそのグループから1人疎遠になっていった。


待ち合わせて、公園に行く友達もいなくなり息子と二人で公園に行き、ほかのママ友グループにも入れず、二人で砂場で山を作る。


「まえさ、〇〇くんとおすなしたよね。またあそびたいな〜」

スコップを手に振り向いた息子の言葉に思わず涙がこぼれおちた。