ならない電話
私が、息子と同じくらいの時、当然ケータイなどはなく、友達からの連絡はすべて家の電話にかかってきた。
私立中学に入ってからは、小学校時代の地元の友達ともあっさり縁が切れ、ドアをピンポンをして誘ってくれる人もいないので、
ただひたすらに誰かから誘いの電話がかかってくるのを待っていた。
夏休み、正月休み、ゴールデンウィーク…家の電話が鳴るたびに、胸を高鳴らせるが、だいたいが親あてかセールス。
こちらから、電話をかけて何とか一、二回遊ぶ約束をとりつけるが、果てしなく長い残りの休みは一人で潰すことになる。
図書館、古本屋、小さなショッピングモール、家の近所をルーティンの用に回って過ごすつまらない毎日。
我が家の電話はひたすら、ならない、ならない。
そして、長期夏休み明け、楽しそうにさざめく友達同士の話で、彼らが誘い合って、映画やプールや遊園地に行ったことを知る。
中には割と自分が仲良いと思っていた友達同士が原宿に出かけていたりして、自分だけが誘われなかったことにショックを受ける。
当時は、連絡網がキチンと配布されていたから、私の電話番号は誰でも知り得た。でも、その番号をプッシュしてくれる人は、誰もいなかったのだ。