おふくろの味とは。

子ども達が将来、独立したときに、私の料理を懐かしく思い出してほしい。

いわゆる、我が家だけのおふくろの味を編み出したく、いろいろ考えたあげく、鳥の唐揚げを選んだ。


元々は、私の母の得意料理で、分量を聞いた上で鶏肉をつけるタレ、にんにくとしょうがの量、卵とハチミツを足すこと。片栗粉と小麦粉の配分など、自分なりに工夫して、低音、高温の二度揚げで完成する唐揚げ。


子ども達にも好評で、この唐揚げは、きっと私がこの世を去ることになっても、子ども達の舌の記憶として残っていくだろう。そう満足していた。


先日、娘の塾弁がある日に、たまたま半日忙しく夕飯に手をかけられなくなってしまい、初めて唐揚げの元を買ってみた。水に溶いたタレに鶏肉をからめて揚げるだけで、簡単だ。


「何これ!めっちゃ美味しい!」

「ちょーうまい!また、これ作って!」

子ども達は目の色を変えてガツガツと唐揚げを頬張った。良くも悪くも食に関心の薄い夫までも

「今日の唐揚げ、美味しいねえ!なんか変えた?」

と、ご満悦だった。それ以来、自家製の味付けは封印。家族が喜ぶなら、とその唐揚げ粉にお世話になっている。


おふくろの味ってなんだろう。少し虚しくなった。