サンタは、いる。

「ねえ、サンタってお母さんなんでしょ」


狂乱のハロウィンが終わり、街はあっという間にクリスマス仕様。そろそろ今年のプレゼントを考えなければ、と思い始めた矢先に、娘からのこの質問。


「違うよ。」

内心、ついにきたかと思いつつ、素知らぬ顔で答えると、娘はその答えを待っていたかのように


「外国にはサンタクロースの協会があって、そこには本当にサンタクロースがいるんだって。でも、毎年、夜にプレゼントを置くのは親だって、先生が言ってた。」


事実。


1ミリのファンタジーも入る隙のない真実。


しかも、娘にとっては親より絶対的存在の大人である学校の先生から告げられた本当のこと。娘の確信しきった顔に言葉が出ない。


正直、なんてこと言ってくれたんだ、という思いだ。

もちろん、いつかはわかることだけど、それは子どもが大人になる過程で自然に。と思っていた。


クリスマスの朝、目が覚めた子ども達が枕元のプレゼントを抱きしめ 

「お母さん、サンタ来てたよ~!!」

と嬉しそうに教えにきてくれる瞬間。その一瞬を思い浮かべて、私は毎年子ども達それぞれにプレゼントを買うのだ。そのワクワクこそが、クリスマスの醍醐味なのに…


「サンタさんは、信じない子どものところにはこないんだよ。」

 

そう軽く脅すと、娘は慌てて

「ウソ、信じてる、信じてるよ~」

と言い繕った。


でも、娘が心から純粋にサンタクロースを、信じる気持ちはもう消えてしまった。

これから、私が何を置いても

「あぁ、今年も親がローラーシューズを買ってくれなかったんだな。」

と、思われるだけだ。


年末の一番楽しみな行事が、なんだか色あせてしまった。